きれいな星空を見てみたい。そう思ったことはありませんか?東京の島・三宅島は空気が澄んでおり、年間を通じて美しい星空を眺めることができます!雲もなく月も出ていなければ、春には「春の大三角」、夏には「天の川」、秋には「秋の四辺形」、冬には「冬のダイヤモンド」などを見ることもできます。
今回は、三宅村地域おこし協力隊・自然ガイド分野の落合直翔さんが、三宅島で星空を楽しむコツやおすすめのポイントを紹介します。島旅の方も、島暮らしの方も、ぜひお楽しみください!
自然豊かな三宅島
初めまして!三宅村地域おこし協力隊・自然ガイド分野の落合直翔(おちあい・なおと)です。昔から自然や海、離島が大好きで、2021年6月に三宅村地域おこし協力隊に着任しました。日々、三宅島の美しい自然を満喫し、島暮らしを楽しみながら活動をしております。
現在は、星空をはじめ、三宅島の自然やいきもののことを伝えられるガイドを目指し、勉強中です。また「三宅村島ぐらし体験」の開催時には、参加者のサポートをしたり、都内のイベント時には三宅島のPRをするお手伝いをしています。私の活動目標は、三宅島の魅力を最大限伝えられるガイドになって、たくさんの観光客の方々に来島いただくことです!
今回は、三宅島できれいな星空を見るためのコツやおすすめのポイントを紹介していきます。ぜひ参考になさってみてください。
三宅島への行き方は2つ
三宅島は、都心から南に約180kmのところに位置する東京都の島です。行き方は、船と飛行機の2つがあります。空旅も船旅も楽しめる三宅島への旅。ご予定に合わせて楽しんでみてはいかがでしょうか?
①大型客船「橘丸」
JR浜松町駅から徒歩10分のところにある竹芝桟橋で、鮮やかなイエローの船が見えたら、それが「橘丸」です。「橘丸」は毎日22:30に出航し、翌朝5:00近くに三宅島に到着、その後、御蔵島や八丈島に向かいます。
船は大型客船で、甲板に出ることもできます。ライトアップされた東京タワーや、スカイツリー、川崎の倉庫群など、夜景を船の上から眺めたり、レインボーブリッジの下をくぐったりしてしばらくすると、東京湾から外洋に出て、あたりは急に真っ暗になります。海の上という非日常を感じながら、就寝して起きたらもうそこは三宅島!季節によっては、甲板から日の出なども楽しめるかもしれません。
三宅島には3つの港(伊ヶ谷・三池・錆ヶ浜)があり、到着日の海況によって接岸港が決まります。また、出航に際しては、海況により「条件付き」となることもあるため、事前に東海汽船の公式サイトなどで確認しましょう!
東海汽船の乗船券の予約には、事前予約の割引や、インターネット割引なども利用できます。おトクな船旅もいいですね!
●東海汽船の公式サイトは こちら
●当日の接岸港については、三宅島観光協会の Twitter でも発信しています。
②飛行機
皆さんは、東京・調布市に飛行場があることをご存じですか?京王線・調布駅からバスで約20分ほどのところに「東京都調布飛行場」があります。調布飛行場は、東京都本土と伊豆諸島を結ぶ空の玄関口で、三宅島と調布の間には、1日に2便または3便が運航しています。
また、フライト時間は約50分で、伊豆諸島の島々を眺めたり、横須賀や江の島、富士山なども時には見えて、あっという間に到着します!
飛行機は、19人乗りの小型の飛行機で、最初は少し驚くかもしれませんが、実はすべての席が窓側に面しています。翼も窓の位置よりも高いところにあるので、どの席にいても外の景色を見ながら空の旅を楽しむことができます。
季節によって運航スケジュールが変わるほか、当日の運航は、調布または三宅島の天候により変更になることもありますので、事前に公式サイトをご確認ください。
●新中央航空の公式サイト こちら
●当日の運航状況は、三宅島観光協会の Twitter でも発信しています。
三宅島の夜空について
三宅島は、島の中心に活火山である雄山(標高 775.1m)がそびえ、それを囲むように5地区が点在し、住民が暮らしています。大自然に囲まれた三宅島は、夜になると「ここは本当に東京なの?」と思うくらいにきれいな星空が現れます!
また、三宅島は都心から約180km離れており、都心の光害(ひかりがい)を受けにくく、街の光も少なめで、空が開けているところならどこからでもきれいな星空を見ることができます。
都市の明かりなど、人工的な光がもたらす「光害(ひかりがい)」は、星が見えなくなるだけでなく、生態系や人間の健康にも影響を与えると言われています。世界の光害の様子をまとめた「Light Pollution Map」で三宅島を見てみると、夜空の暗さが保たれていることが分かります。
●世界中の光害について調べることができる「Light Pollution Map」は こちら
春の大曲線、夏の大三角、秋の四辺形、冬の大三角などの季節を代表する星座はもちろんのこと、天の川や、運が良ければ流れ星も見ることができます。月食や流星群などの天体イベントを狙って三宅島旅行を計画するのもおすすめです!
三宅島で星空を見るコツ
自然豊かな三宅島で星空を見るには、どんなことに気をつければよいでしょうか?ここでは、星空観察に役立つグッズや、服装、コツなどをご紹介します。
あると便利なグッズ
①スマートフォン
スマートフォンがあれば足元を照らす光にもなり、万一の時にも電話できるので必ず携行しましょう。また、星空アプリを入れておけば、星座も探しやすくなるのでおすすめです。
長時間の観察の際には、スマートフォン用のバッテリーもお忘れなく!
②ヘッドライト
スマートフォンの光だと少し弱いこともあるので、ライトがあるとより一層安心できます。
また、暗い中で両手がふさがれてしまうと危ないので、ヘッドライトがおすすめです。
③星座早見盤
スマートフォンの星座アプリ以外でも、星空観察といえば昔も今も使われる「星座早見盤」。電波状況が悪い場所での観察には早見盤が役立ちそうですね。自分で手づくりもできるようなので、作ってみるのもいいかもしれません!
●手づくりの星座早見盤は こちら
④方位磁針
北極星を見つけることで、ほかの星の位置も分かりやすくなりますね。スマートフォンのアプリで使える場合もあります。
⑤(持っていれば)一眼レフカメラと三脚
一眼レフカメラと三脚があればきれいな星空を撮影することができます!
灯台などの島内の観光スポットを入れて星空撮影にチャレンジしてみてください。
星空の撮影方法については、さまざまなサイトで紹介されていますので、ぜひチェックしてみてください。ここでは、一例として、ニコンの公式サイトの情報をご紹介します。
●「ニコンのカメラで天体写真を始めよう」は こちら
服装
【春】
長袖長ズボンに厚めの防寒具を持って行くことをおすすめします。外気は暖かくても、海風が強い可能性があるので、寒かった時に重ね着できるものがあると便利です。
【夏】
長袖長ズボンに薄めの防寒具を持って行くことをおすすめします。日中は暑いですが、夜は山に行くと寒いことも。海風が強い時に重ね着できるものがあると便利です。また夏は蚊や虫が多いので、虫よけスプレーなど、防虫対策をしておきましょう。
【秋】
三宅島の秋は暖かい日も多く、日中は軽装で過ごせます。ただし、夜になると急に冷えることもありますので、春と同じような防寒具を持っていくとよいでしょう。
【冬】
冬は防寒対策をしっかりしていくことをおすすめします!冬の三宅島は、気温も低い上に風が強い日も多いです。手袋、マフラー、ニット帽などで、普段露出している部分の防寒も忘れずに!!防風対策としてマスクも役立ちます。カイロなどもあるといいですね。
星空を見るタイミング
光害がほぼなく、美しい夜空を眺めることができる三宅島ですが、遮るものがないこともあって月の光は明るく、満月の時などは本当に夜空が明るくなります。そんな時は、どうしても星空の撮影は難しくなりますね。
三宅島での星空の撮影でおすすめしたいのは新月の時です!「新月の時にしか星空は見れないの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。
月の出入りの時間を調べて、月が出ていないタイミングを狙って星空を見に行くことをおすすめします。
月の出入りや月齢、新月や満月のスケジュールなどは、国立天文台の「暦計算室」のページが役立ちます。 こちら からチェックしてみてください。
また、何より三宅島の天気を調べておくことは星空観察には大切です。島の天候は変わりやすく、風向きが急に変わることも。日本気象協会の「tenki.jp」では、三宅島の天気予報を1時間ごとに発表しています。ぜひ こちら からチェックしてみてください。
三宅島星空観察おすすめスポット
街の光がなく、空が開けているところなら基本的にどこでも星空を見ることができる三宅島ですが、特におすすめしたい観察ポイントをご紹介します!三宅島は大自然に囲まれており、昼間でも足元に気をつけた方がよい場所が多いですが、夜間になるとさらに足元が見えにくくなるため、移動には十分お気をつけください。特に、海岸近くに行く時は、ヘッドライトなどを装着して明かりを確保し、複数の方と出かけるようにしましょう!
【①伊豆岬灯台周辺】
伊豆地区にある伊豆岬灯台周辺は灯台以外に明かりがなく、星空をきれいに見ることができます。
伊豆岬灯台は、明治42年6月1日に、伊豆諸島最初の灯台として初点灯しました。他の一般的な灯台と違い、形が四角いのが特徴的です。また2000(平成12)年の三宅島の大規模噴火の際には消灯するという、火山島の灯台らしい経験もしています。(2002(平成14)年復旧)
星空の撮影にも人気のスポットです。灯台を入れた写真をぜひ撮影してみてください!なお、伊豆岬灯台には段差が多数存在します。星空を見に行く際はライトを携帯し、十分足元に注意してください。また海側にはあまり近づかないようにしましょう。
【関連記事】 伊豆岬灯台の灯火が白熱電球からLEDに変わる! |
【②火の山峠】
神着地区の火の山峠は、釜の尻海岸と椎取神社の途中にある道を山側に登っていった先にあります。火の山峠からは、1940年の噴火でできたひょうたん山と、1962年の噴火でできた三七(さんしち)山を見ることができます。ここは周りに明かりもなく、標高も高くなっており星空観察に適しています。ただし、火の山峠にたどり着くまでの道は夜は分かりにくく、初めて出かける場合は迷う場合もありますので、宿泊先の方に行き方を聞いてから出かけましょう。
【③サタドー岬】
サタドー岬灯台は坪田地区にあります。ここも灯台以外に明かりがないため、星空観察に適しています。「サタドー」の語源はヒンディー語で「地獄」という説と、見晴らしのいい景色なので「便りや知らせ」を意味する「沙汰」から来ているという説があります。またサタドー岬では、熱い溶岩流が冷えて体積の収縮によって形成される柱のような割れ目の「柱状節理」が見られます。日中はこちらもチェックしてみてください!
なお、サタドー岬は断崖絶壁になっております。星空を見に行く際はライトを携帯し、足元に十分注意してください。また、海側にはあまり近づかないようにしましょう。
【④沖原海岸周辺】
坪田地区の沖原(おきばら)海岸周辺は街灯がないため星がきれいに見えます。
沖原海岸は玄武岩の溶岩流でできた海岸で、2500年よりも古い時代の溶岩流から形成されました。またこの海岸からは日の出だけでなく、月の出を見ることもできます。満月の時は星は見えにくいですが、月の出を見るのもおすすめです。なお、都道から沖原海岸に向かう道は細く、夜に出かける際は十分注意して出かけましょう。
【⑤大路池】
坪田地区の大路(たいろ)池でも星がきれいに見えます。
大路池は伊豆諸島最大の淡水湖で、約2500年以上前の噴火によって形成された火口湖です。ここは三宅島屈指のバードウォッチングポイントで、特に5、6月の繁殖期はさえずり密度の高さから「日本一のさえずりの小径」とも呼ばれています。
大路池は月も雲も風もないときに行くと、満点の星空が池に反射し幻想的な景色を見ることができます!ただし、大路池に向かう道は真っ暗で、舗装もされていないので、車の運転には十分ご注意ください。
【⑥新鼻新山】
阿古地区の新鼻新山(にっぱなしんざん)は1983(昭和58)年の噴火で一夜にしてできた火砕丘(かさいきゅう:火口から噴出された岩石や火山灰が積もってできた丘)です。海側が削られており、火砕丘の赤と黒のきれいな断面を見ることができます!ここも周囲に街灯がないのできれいな星空を見ることができます。
西風を受けやすいエリアなので、星空を見に行く際は防寒着を持っていくことをおすすめします。なお、星空を見に行く際はライトを携帯し、足元に十分注意してください。また、海側は崖になっているため、あまり近づかないようにしましょう。
【⑦七島展望台】
七島(しちとう)展望台はその名の通り、見晴らしの良い日には伊豆諸島の7島(大島、利島、新島、式根島、神津島、御蔵島、八丈島)を見ることができます。星空だけでなく、日中の景色や夕焼けを見るのにも最高の場所です。ここからの眺めは必見です!また、三宅島の中心に坐する雄山をすぐそばで見ることができます。
ここは標高も高いので、風が強く、夜間は冷える場合があります。季節を問わず、防寒具を持っていくことをおすすめします。
なお、七島展望台は周囲が急斜面になっていますので、星空を見に行く際はライトを携帯し、足元に十分注意してください。また、展望台に向かう道は街灯があまりなく、暗い道になりますので、運転にも十分お気をつけください。さらに、展望台付近では携帯電話の電波が届きにくく、不通になることが多いので、できるだけ複数の方と出かけるようにしましょう。
【⑧富賀浜】
富賀浜(とがはま)は、阿古地区にあるダイビングやシュノーケルができるポイントです。富賀浜には、溶岩が作り出したアーチや柱状節理、さらに伊豆諸島最大級とも言われているテーブルサンゴの群生が見られます。
なお、海岸が近く、夜間は風が強いと寒くなるので、季節を問わず防寒具を持っていくことをおすすめします。
【⑨メガネ岩周辺】
阿古地区にある、今崎海岸のメガネ岩周辺も街灯がないため星空がきれいに見えます。
メガネ岩は観光客にも人気のスポットですが、どうやってできたのでしょうか?実は、1643年に起きた噴火で大量の溶岩が流出、その溶岩を長年にわたって波が侵食し、大きな穴を作り、メガネ岩ができました。かつてはメガネのように穴が2つ空いていたのですが、1959年の伊勢湾台風により片方が崩壊し現在の形になっています。
メガネ岩周辺は星空だけでなく夕日もきれいに見えるので、夕日を眺めるのもおすすめです!
なお、メガネ岩周辺は海に対して断崖絶壁になっています。海側にはあまり近づかないようにしましょう。
三宅島の星空を楽しもう!
今回は、三宅島で星空を楽しむためのコツや、おすすめのポイントなどについてご紹介しました。いかがでしたか?月が明るい時期を外せば、基本的にはほぼどこからでも美しい星空を眺めることができる三宅島ですが、日中歩けばお分かりのように、大自然がそのまま残っており、足元が悪い場所や、道が細い場所など、夜間になるとさらに注意が必要な場所も多くあります。
また島の天気は変わりやすく、急に風が変わったり寒くなることもあります。軽装でもすぐ暖かくなるような防寒具を季節を問わず携行するなど準備をしていただくと、より星空観察も楽しんでいただけると思います。
島旅で訪れた方も、島暮らしをする方も、ぜひ三宅島の夜空をゆっくり眺めてみてください。とても豊かで贅沢な時間を過ごすことができます!
●記事内容は、執筆時点に基づきます。