三宅島でザトウクジラを見つけてみよう! 自然ガイドの菊地ひとみさんに、コツや楽しみ方を聞きました!

皆さんは、10月末~4月半ばごろまで、三宅島周辺でザトウクジラが回遊することをご存じですか?

寒い冬ですが、ザトウクジラの姿を観察できる絶好のチャンスでもあります。島暮らしの人も、島旅の人もぜひ見つけてみてはいかがでしょうか?

ザトウクジラってどんなクジラ?

本州よりも南に位置する三宅島ですが、冬は西風が強く、実はとても寒い日があり、外に出るのが少しおっくうになる時もあります。

そんな中、三宅島の冬の楽しみのひとつとして「ザトウクジラの観察」があることを、皆さんはご存じでしょうか?

近年、10月末ごろから、三宅島周辺の海でザトウクジラが観察されるようになりました。陸から観察できた人、船に乗っていて近くで遭遇した人など、島内で交わされる会話の中にクジラの話がよく出てくるようになります!

「ザトウクジラ」とは、ナガスクジラ科のヒゲクジラで、国立科学博物館のサイトによると、生まれた時の大きさは4.1~4.5m、オトナになると13~15mにもなり、体重も30~40トンになるとか!30トンというと、体重50kgの人の600人分の重さになりますが、そんな巨大ないきものが海の中で暮らしているとは驚きますよね。しかも三宅島からその姿が観察できるとは!

そこで今回は、三宅島でザトウクジラをまだ見たことがない方のために、三宅島で自然ガイドを長年されている、earth wind &(アース ウインド アンド)代表の菊地ひとみさんに、そのコツや楽しみ方をお聞きしました。これを読めば、きっとあなたもザトウクジラの姿を探せるはず!

三宅島でザトウクジラを見つけるには?

自然ガイド・菊地ひとみさんのプロフィール

ⓒMitsuhiro Shimazaki

ザトウクジラが島で観察され始める10月末ごろから、島を徐々に離れていく春先まで、約半年にもわたり観察を続ける、自然ガイドの菊地ひとみさん。

もともとは奈良県の出身で、イルカのトレーナーとしてキャリアをスタートし、野生のイルカに出会って仕事がしたいと、1999年に三宅島でドルフィンスイムのガイドになりました。ところが、2000年に三宅島で大規模な噴火活動が起こり、その後全島避難を余儀なくされ、菊地さんも島を離れることに。

2007年に再び三宅島に戻り、2008年に自然ガイドとして新しいキャリアをスタート。その後、2010年には「三宅島ネイチャーツアーmahana(マハナ)」を立ち上げ、専属ガイドとして活動の場を広げていきます。さらに、2020年にはご自身の会社として「earth wind &(アース ウインド アンド)」を開業し、これまで、島内外で約4,200名の方々にガイドを行ってきました。

三宅島でのザトウクジラの観察について

ⓒHitomi Kikuchi

毎シーズン、寒い中ザトウクジラの観察を続ける菊地さんですが、島内各地で同じように観察を続ける島民の方々とネットワークを持ちながら、ザトウクジラが出現しそうなポイントやルートを探り出していきます。

菊地さんによれば「基本的には、毎日どこかしらの海辺で観察するようにしています。日々のスケジュールもありますが、ほぼ一日中観察を行うことも。時間が限られる時でも、ひとつの場所で最低20分は観察します。」とのこと。

ザトウクジラのシーズンが終わると、菊地さんは、撮りためた尾びれの写真を、島外で生態調査を行っている団体に照会して個体の情報を共有しています。ほかにも、三宅島自然ふれあいセンターアカコッコ館で発行している「Miyakensis(ミヤケンシス)」に、前年度の調査結果を執筆しています。

「Miyakensis(ミヤケンシス)」最新号の目次については、こちらからご覧いただけます。

ザトウクジラを観察する時に、あると便利なグッズ

ⓒMika Kajita

「ザトウクジラを見てみたい!」と思う気持ちは募りますが、実際に観察するにあたり、用意しておくと便利なグッズはどんなものでしょうか?菊地さんに教えていただきました!

「三宅島では、現在は陸からのウォッチングのみとなっているので、海岸線からの観察です。持っていると便利なのは、まずは「双眼鏡」。数キロ先のザトウクジラも観察することができるので、持っている方はぜひ携行するとよいと思います。

また、風下や、風が穏やかな日は寒さも和らぐものですが、風上エリアにクジラがいるときは、防寒は必須です!気温は内地より高いとしても、風速10m/sほどの風が吹くと、体感的にはとても寒く感じます。

調査で半日外にいるだけで、体は芯から冷えてきます。私の場合は、厚手の上着、ニット帽、手袋、マフラー、シープスキンブーツのほか、背中にはカイロを貼って、完全防備で観察しています。(笑)」

南の島とはいえ、やはり冬は寒い三宅島。ザトウクジラに出会えたら、寒さも忘れそうですが、しっかり防寒して観察した方がよさそうですね。

ⓒMika Kajita
ⓒHitomi Kikuchi
ⓒHitomi Kikuchi

見つけるコツは?

海岸線に立つと、目の前には海原が広がっていて、いったいどこにザトウクジラが現れるんだろう?と思いますよね。じっと一点を見つめているわけにもいかず、寒いこともあって、探すことをあきらめたくなってしまうかもしれません。

菊地さんに、ザトウクジラを見つけるコツをお聞きしました。

「クジラによってブロー(噴気)の高さは違いますが、ザトウクジラでは4~5mほどあがります。ブローは、クジラの肺から一気に出される呼気なので、白くて勢いよく上がり、ゆっくりと消えていきます。白波とはまったく違うので、慣れてくれば分かると思います。海岸近くで遊泳するザトウクジラのブロー音が聞こえる時もあり、それを耳にできたらラッキーですね!」

見つけやすい場所は?

三宅島のさまざまな場所でザトウクジラの姿が観察されていますが、より見つけやすい場所はあるでしょうか?菊地さんや島内でよく観察をしている方々に聞いてみました。

今崎海岸【阿古地区】

ⓒミヤケジマズ

メガネ岩がある今崎海岸は、普段から夕焼けを眺めたり、写真を撮ったりする人が多くいる場所ですが、ザトウクジラの姿を探す人もよく見かけます!

富賀浜【阿古地区】

ⓒミヤケジマズ

都道を曲がり、鳥居をくぐり、富賀神社の先を下っていくと、富賀浜が見えてきます。

手前には、海が見渡せる場所があり、冬の西風が強い時はとても寒いですが、ザトウクジラの観察スポットになっています。

伊豆岬【伊豆地区】

ⓒミヤケジマズ

季節を通じて、日中は青空に白い灯台が映え、夜は星空が美しく見えるスポットとして人気ですが、伊豆岬もザトウクジラの観察スポットにもなっています。

沖原海岸【坪田地区】

ⓒミヤケジマズ

Terrace Cafe Restaurant GIZMO(テラス カフェ レストラン ギズモ)さんがある沖原海岸のあたりでも、ザトウクジラの観察がよく行われています。お食事のついでに観察してみるのもいいですね。

ギズモさんのインスタグラムは、こちらをご覧ください!

空港下【坪田地区】

ⓒミヤケジマズ

目の前に海原が広がり、こちらでもザトウクジラの観察がよく行われています。後ろを振り返ると、三宅島空港や雄山も近くに見えます。車を停めてお散歩しながら海をみつめるのもいいですね。

みんなでザトウクジラを見つけよう!

引用:三宅島観光協会

三宅島の周辺でその姿が観察できるようになったザトウクジラですが、菊地さんやほかの自然ガイドの皆さんの継続的な調査に加え、一般の方でも、ザトウクジラを見かけたら、その情報をぜひ共有してみませんか?

三宅島観光協会では、現在、ザトウクジラの目撃情報を収集中です。もし見かけたら、まずは下記についてメモをしてみましょう。

ザトウクジラを目撃した日時

目撃場所

個体数(〇群〇頭など)

様子(ブロー、ブリーチングなど)

情報は、下記の2つのいずれかで募集中とのことです。

1)ご自身のX(旧Twitter)アカウントでツイートする

     その際、ハッシュタグ「 #三宅島クジラ #クジライン 」 を投稿内にお忘れなく!

2)三宅島観光協会のメールに送る(上記のチラシのQRコードからも送信できます)

     メールアドレス:mail (a) miyakejima.gr.jp    

      ※(a)を@に変えて送信ください。

記録するときのコツとは?

ⓒ三宅島観光協会

ザトウクジラを見つけた時は、うれしさと興奮のあまり、記録まで取れない!と思う方も多いですよね。どんなことに注意して記録すればよいか、菊地さんにお聞きしました。

場所と時間と頭数(何群何頭)は、記録があることによって、今後のデータ蓄積に役立ちます。よく「ブロー回数=個体数」と勘違いされがちですが、肉眼で10回ブローが見られたから10頭いたというのは違うんですよね。(笑)1頭が再度潜る前に、何度も呼吸をする場合がほとんどです。双眼鏡で観察するとその様子が分かると思います。

そのほか、どんな行動をしていたか?(ブリーチング、ペダンクルアーチ、テールスラップなど)なども分かれば記録するとよいと思います。また、尾びれの腹側の写真が記録できれば個体識別にも役立ちます。」

三宅島で収集された情報が、ほかの島や海域で発見されるザトウクジラの情報につながっていく可能性もあり、地道な調査ですが、とても大切なことが分かりますね。ぜひ、島で暮らす皆さんも、島旅を楽しむ方々も、一緒にザトウクジラの観察をしていきましょう!

ちなみに、ザトウクジラは大型クジラの中で最もアクロバティックな行動を取るとのことで、菊地さんにお聞きした観察ポイントにも出てきた主な行動は、次のようなものです。(座間味島ホエールウォッチング協会の公式サイトほかを参照しました。)

ブリーチング

胴体の2/3、またはほぼ全身を、ジャンプするように水面上に跳び出してくる行動のこと。体の上半分から、時には全身を水面上に出したり、跳び上がったり、体を反転させて水面に落ちたり、背面跳びのように背中から落ちたり・・とパターンはさまざまだそうです。

ペダンクルアーチ

“Peduncle(ペダンクル)”とは直訳すると「枝や茎から伸びて花を支える部分」の意味ですが、ここでは、クジラの尾の付け根あたりのことを指すようです。クジラが潜水を始める前の行動で、背びれがよく見えて、アーチ状に見えることからこのように呼ばれるそうです。

テールスラップ

海面上に高く持ち上げたテール(尾)を降り下ろして海面を叩く行動のこと。一度きりではなく、何度も繰り返すことが多く、腹を下側にしたり、上側にしたりする時もあるそうです。また、1頭の時もあれば、複数頭の時もあるようです。

ザトウクジラの観察情報がわかる

ⓒ三宅島観光協会

三宅島観光協会の専用ページでは、日々更新される島内でのザトウクジラの観察情報を見ることができます。

菊地さんの観察情報をはじめ、さまざまな場所でみつかるザトウクジラの様子が発信されていますので、ぜひ注目していきましょう!

専用ページはこちらからご覧ください!

三宅島の冬を楽しもう

ⓒミヤケジマズ

今回は、三宅島で観察されるようになったザトウクジラについて、その観察方法や見つけるコツなどを、自然ガイドの菊地ひとみさんにお聞きしました。

三宅島の冬も本格的になり、西風が吹き、海も荒れぎみで寒い日々が続きますが、すぐ近くでザトウクジラが過ごしていることを知るとワクワクしてきますね。ぜひ、冬の島の風物詩を皆さんで楽しみましょう!

ザトウクジラの観察情報や、島内の自然について、菊地さんが発信している情報はこちらからご覧ください。

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●記事監修:菊地ひとみ、三宅島観光協会

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。